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小泉 智; 稲見 俊哉
Macromolecules, 32(17), p.5613 - 5621, 1999/00
被引用回数:4 パーセンタイル:23.54(Polymer Science)偏極中性子解析によって、干渉性散乱とスピン非干渉性散乱を分離し、高分子の局所構造緩和を詳細に調べた。用いた高分子は、芳香環がモノマー単位として数珠つなぎに共有結合したランダムコポリエステルであり、芳香環だけが水素を持っている。分離された干渉性成分はおもに炭素からの散乱で、高分子の凝集構造を反映している。また非干渉性成分は水素に由来し、弾性非干渉性構造因子(Elastic Incoherent Structure Factor)と呼ばれ、水素(結局は芳香環)の動きの時空自己相関の長時間平均である。言い換えれば、芳香環の動くことのできる空間の「大きさと対称性」を反映している。融点以上の高温では、弾性非干渉性構造因子は、芳香環が共有結合の軸周りの円軌道にそって自由回転緩和していると仮定してよく再現された。またガラス転移以下の低温では、弾性非干渉性構造因子は振動運動に由来するデバイワーラー因子へと移行し、振動運動の不均一性を反映して非ガウス的であることがわかった。
小泉 智
Physica B; Condensed Matter, 241-243, p.973 - 975, 1998/00
被引用回数:1 パーセンタイル:11.82(Physics, Condensed Matter)研究に用いた液晶性コポリエステルポリマーは、融点以下の低温で完全な結晶化をせず、分子配向を保持したまま異方性ガラスを形成する。このような異方構造をもつ高分子に対して中性子非弾性散乱実験を行い、デバイワーラー因子から水素の局所運動の平均自乗変位とノンガウシアンパラメータを評価した。波数ベクトルが分子軸と直行する方向では、各温度でノンガウシアンパラメータが重要で、温度の低下とともに増大する。他方、平行となる方向ではノンガウシアンパラメータは各温度で小さく、温度に依存しない。両光学系について平均自乗変位は温度に比例して増大する。分子軸と平行の方向では、共有結合が局所構造を拘束するのに対して、分子軸と直行する方向では分子軸周りの回転の自由度が存在し、これは周辺の分子が作る「異方的Cage」から拘束を受けているものと思われる。この異方的Cageの中の分子の局所運動は、デバイワーラー因子の非調和性に大きく寄与し、温度の低下とともにガラス化の指標とするノンガウシアンパラメータの増大をもたらしている。